ハードディスクとは、記憶装置の一つで、PCにおける記憶装置としては最も基本的なパーツです。
ハードディスクはCDやDVDとは異なり、磁気を利用して情報の記憶を実現しています。
記憶装置としては最も大きな容量を持っていて、様々な情報を保存する事ができ、WindowsやLinuxを始めとするオペレーティングシステムもハードディスクにインストールされて利用されます。
ハードディスクは、PCに組み込まれているだけでなく、プレイステーション2の一部にも搭載されています。
近年は、転送速度、接続形式などの変化とともに大容量化が進んできました。
価格も大容量のものでも手頃となり、外付けなど扱いの簡単な商品も多くなりました。
ここでは、身近な記憶装置となったハードディスクについて簡単にまとめてみます。
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ハードディスク
メーカー : Maxtor
容量 : 120 GB
接続形式 : UltraATA/133
回転速度 : 7200 rpm(流体軸受け)
キャッシュ :8 MB
シークタイム :9 ms
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ハードディスクの規格は、大きさと接続形式によって決まります。
ハードディスクの大きさは3.5インチのものと、2.5インチのものがあります。
3.5インチのものはデスクトップ向けであり、2.5インチのものはノートパソコン向けです(デスクトップPC に2.5インチを積む事はできます)。
接続形式とは、ハードディスクとマザーボードの接続方法です。
接続形式を大別すると・・・
- シリアルATA
- UltraATA
- SCSI
- USB
- IEEE
が挙げられます。
上記のうち、上の3つはハードディスクを内蔵する場合、下の2つは外付けハードディスクに使用される規格です。
また、ハードディスクのデータ転送速度は、接続形式によって決まります。
ハードディスクとマザーボードの接続形式にはいくつかの種類があることは先にも述べました。
外付けのハードディスクの場合には、ハードディスクが納まっているケースの端子によってUSB かIEEE かが決まります。
一方、内臓ハードディスクの接続形式は、マザーボードの仕様を基準にしてハードディスクを選ぶ必要があます。
例えば、マザーボードがシリアルATA未対応であれば、シリアルATA接続のハードディスクは使用できません(PCIカードで拡張などの例外は除きます)。
ここでは、SCSI、UltraATA、シリアルATAについて、接続形式とデータ転送速度を交えながら解説していきます。
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・ SCSI (Small Computer System Interface)
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SCSIは、主にサーバー用途で利用されている接続形式で、「スカジー」と読みます。
SCSIの規格表を以下にまとめました。
現在の主流は、Ultra3 SCSI(Ultra160 SCSI)あたりのようです。
SCSI 規格表
世代 |
名称 |
説明 |
データ幅 |
最大データ転送速度 |
最大接続台数 |
SCSI-1 |
SCSI-1 |
初期SCSI |
8 bit |
5 MB/s |
8台 |
SCSI-2 |
Fast SCSI |
SCSI-1の改良 |
8 bit |
10 MB/s |
8台 |
Fast Wide SCSI |
SCSI-1の改良 |
16bit |
20 MB/s |
16台 |
SCSI-3 |
Ultra SCSI |
Fast SCSIの改良 |
8 bit |
20 MB/s |
8台 |
Wide Ultra SCSI |
Fast Wide SCSIの改良 |
16bit |
40 MB/s |
16台 |
Ultra2 SCSI |
Ultra SCSIの改良 |
8 bit |
40 MB/s |
8台 |
Wide Ultra2 SCSI |
Wide Ultra SCSIの改良 |
16bit |
80 MB/s |
16台 |
Ultra3 SCSI(Ultra160 SCSI) |
Ultra2 SCSIの改良 |
16bit |
160 MB/s |
16台 |
Ultra320 SCSI |
Ultra160 SCSIの改良 |
16bit |
320 MB/s |
16台 |
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・ IDE(Integrated Drive Electronics)
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IDEとは、パソコンとハードディスクを接続する方式の一つで、アメリカ規格協会(ANSI)によって「ATA(AT Attachment)」として標準化されました。
IDE規格は、改良を重ねる事によってEIDE(Enhanced Integrated Drive Electronics)→UltraATA(Ultra AT Attachment)というように拡張され、呼ばれています。
初期のIDEはハードディスク以外のデバイスを接続する事ができませんでしたが、EIDEからは光学ドライブも接続可能となりました。
また、扱う事のできるハードディスクの最大容量もIDEの拡張とともに大きくなり、データ転送速度も改善されました。
データ転送速度は、DMA(Direct Memory Access)という方式で決まります。
DMAとは、CPUを介さずに各装置とRAMの間で直接データ転送を行なう方式です。
ハードディスクの用語で利用される”Ultra DMA”とは、IDEケーブルのデータ転送方式の事であり、同じケーブルでもデータ方式の向上によって最大速度が増加します。
現在では、UltraATAと同じ意味で使われる事が多く、例えば、”Ultra ATA/133”の場合には”Mode 6”とは表さずに”ATA-7”と表しています。
IDEの規格表と、DMA転送モードを以下の表にまとめました。
IDE 規格表
規格名 |
通称 |
対応転送モード |
最大データ転送速度 |
信号線 |
ATA |
IDE |
- |
8.33 MB/s |
40芯 |
ATA-2 |
Enhanced IDE |
- |
16.7 MB/s |
40芯 |
ATA-3 |
Enhanced IDE |
- |
16.7 MB/s |
40芯 |
ATA-4 |
Ultra ATA/33 |
Ultra DMA/33 |
33.3 MB/s |
40芯 |
ATA-5 |
Ultra ATA/66 |
Ultra DMA/66 |
66.7 MB/s |
80芯 |
ATA-6 |
Ultra ATA/100 |
Ultra DMA/100 |
100 MB/s |
80芯 |
ATA-7 |
Ultra ATA/133 |
Ultra DMA/133 |
133 MB/s |
80芯 |
Serial ATA |
Ultra SATA/1500 |
- |
190 MB/s |
7芯 |
Serial ATA 3.0G |
Ultra SATA/3000 |
- |
380 MB/s |
7芯 |
DMA 転送モード表
転送モード |
転送速度 |
Ultra DMA Mode 0 |
16.7 MB/s |
Ultra DMA Mode 1 |
25 MB/s |
Ultra DMA Mode 2 |
33.3 MB/s |
Ultra DMA Mode 3 |
44.4 MB/s |
Ultra DMA Mode 4 |
66.7 MB/s |
Ultra DMA Mode 5 |
100 MB/s |
Ultra DMA Mode 6 |
133 MB/s |
右の写真は、マザーボードの一部です。
このマザーボードには、IDE端子が2つ(青:プライマリ、白:セカンダリ)と、シリアルATA端子(オレンジ色)が2つあります。
ハードディスクがシリアルATAの場合には、マザーボードのシリアルATA端子に接続し、ハードディスクがIDEの場合には、IDE端子に接続します。
マザーボードによって、どのDMA転送モードまでをサポートしているかが異なります。
例えば、マザーボードがUltra DMA/100 対応の場合、Ultra DMA/133 のハードディスクを接続すると、転送速度は100MB/s に落ちますが、使用できないわけではありません。
一方、このマザーボードにUltra DMA/66 のハードディスクを接続した場合、マザーボードのサポート転送速度の方が大きいので、パフォーマンスに影響はありません。
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右の写真は、IDEケーブルとシリアルATAケーブルです。
IDEケーブルには、マザーボードに接続する部分(離れている方の端子)の他に、マスタとスレーブの2つの端子が用意されています。
近くに寄っている2つの端子のうち、端の端子をマスタのデバイスに、中央の端子をスレーブのデバイスに接続します。
ハードディスクをIDEケーブルで接続する際には、マスタ/スレーブに応じて、ハードディスク後面の”ジャンパーピン”を設定する必要があります。
ハードディスクをマスタに接続するならば、マスタ用のピン配置にする必要があります。
このピン配置については各ハードディスクによって異なりますが、ハードディスクのラベルに書いてある事がほとんどです。
一方、シリアルATAの場合にはマスタ/スレーブの設定はありません。
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ハードディスクの性能は、以下の様な点で評価できます。
- 容量
- 接続形式
- 回転速度
- キャッシュ
- シークタイム
- 騒音/発熱
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・ 容量
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容量は、ハードディスクの記憶容量の事で、大きいほど多くの情報を記憶できます。
デスクトップ用のハードディスクならば数GB〜300GB超と幅広くあります。
最近は、デスクトップ用ならば、80GB〜200GB辺りが手頃だと思います。
一方、ノートパソコンのハードディスクはデスクトップ用の物と大きさが異なります。
デスクトップ用は3.5インチであるのに対し、ノート用は2.5インチの大きさです。
ノート用のハードディスクは、10GB程度〜100GB超の容量のものがあります。
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・ 接続形式
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ハードディスクの接続形式によって転送速度の上限が決まります。
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・ 回転速度
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回転速度とは、ハードディスクの円盤が回転する速さを示します。
回転速度が速いほど、データの読み書きの速度が向上します。
この単位には、”rpm(=Revolution Per Minute)”を用います。
しかし、回転速度が高くなるほどハードディスクの発熱や騒音の問題が大きくなります。
回転速度の高いハードディスクは、軸部分に”流体軸受け”が使用されているなど、寿命・騒音対策がなされています。
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・ キャッシュ
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キャッシュとは、読み込んだハードディスクの内容をいったんため込んでおくメモリー容量です。
この容量は、大きいほど高性能であり、単位にはMB を用います。
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・ シークタイム
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シークタイムとは、ハードディスクに対し読み書きの命令が出されてから実際の場所に到達する平均時間です。
この値が小さいほど、ハードディスクへのアクセスが早いことになります。
単位には、ミリ秒(ms)を使います。
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・ 騒音/発熱
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ハードディスクは、様々なメーカーが商品を出していますが、メーカーによってハードディスクの特徴が異なります。
アイドル状態やシーク時の音の大きさが違うらしいのですが、”使うならXXXXのハードディスク”といった感じで、個人のこだわりがあるようです。
ただ、購入の際には信頼性の高いメーカーのハードディスクを選ぶ方が後々のために良い事は確かです。
IDEのハードディスクや光学ドライブを利用するには、各デバイスとマザーボードのIDE端子をIDEケーブルで接続します。
一般的にマザーボード上には、2個のIDE端子があり、それぞれの端子に2個ずつデバイスを接続する事が出来ます。
1本のIDEケーブルには2つのデバイスを接続する事ができ、マザーボードにIDE端子が2つあるならば、最大で計4つのデバイスを接続できます。
ここで、デバイスを複数接続した場合、各デバイスの優先順を決めなければなりません。
この優先順を”プライマリ/セカンダリ”や”マスタ/スレーブ”というように表します。
マザーボードのIDE端子は、予めプライマリ/セカンダリが決まっています。
優先順は、以下のようになっています。
プライマリ/セカンダリ と マスタ/スレーブ
IDE端子 |
マスタ/スレーブ |
優先順 |
プライマリ |
マスタ |
1 |
スレーブ |
2 |
セカンダリ |
マスタ |
3 |
スレーブ |
4 |
一般的には、プライマリのマスタにハードディスク(OS起動用)を接続し、セカンダリのマスタに光学ドライブを接続します。
2台目のハードディスクを増設する場合には、プライマリのスレーブに接続する、といった要領で接続していきます。
接続後は、BIOS で正常に認識しているか確認します。
ハードディスクを自動で検出してくれない場合もありますので、その場合にはマザーボードのマニュアルに従って手動で認識させます。
ハードディスクはたくさんの情報が入っているだけに、寿命が気になります。
数ヶ月で壊れてしまうものから、数年経っても壊れないものまで様々あるという情報を見かけます。
どの情報も間違いではなく、それぞれ使用している環境や用途が異なるために壊れる時期が違うのだと思います。
ここでは、ハードディスクの物理的な故障について扱います。
ハードディスクが壊れると、ディスクが正常に回転しなくなります。
個人のレベルでは、データを取り出すことは不可能です(取り出してくれる業者もありますが、非常に高価です)。
故障の可能性を感じたのであれば、負荷をかけないように気をつけながらバックアップをします。
故障の前兆に気が付くかどうかが大きなポイントです。
ハードディスクが故障する前兆としては、「読み書きが異常に遅い」「エラーが多発する」「変な音がする」など色々あります。
ハードディスクの寿命を左右するのは、衝撃と温度です。
ハードディスクは重さがあり、一見丈夫そうには見えますが、衝撃には非常に弱いです。
これは、ヘッドと円盤が非常に近く配置されているというハードディスクの構成上、衝撃に弱いという事になります。
もちろん、外側が丈夫に作られていますが、衝撃を与えないように扱う事、動かないようにきちんと固定する事が重要です。
ハードディスクそのものからの発熱も問題です。
過度のアクセスや暑い室内での使用は良くありません。
PC ケース内の空気循環も大切で、ケース内に熱が篭らないように工夫します。
例えば、騒音が気にならない程度にケースファンを増設したり、シャドウベイのハードディスクは1段隔てて配置し、お互いの熱をもらわないようにする事などが効果的です。
PC ケースが直射日光に当たるような所で使用するのは危険です。
特に、年中稼動しているようなサーバは熱対策が重要になり、データ保護のためにはRAID の導入も考慮しておくべきです。